IGYO10さん

音ゲーや生活やその他のことを書いてます。

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◆最近読んだ本とか◆

 まずはこの二冊。

 

 年収100万くらいでたのしく暮らしているひとたちの話。前者の著者は50歳くらいでこの生活20年(だったかしら?手元に本がないから正確にわからない)、後者は20代後半でこの生活5年目とプロフィールにあり。どちらも平明な文体で読みやすい。前者は自炊が趣味の方だそうで、食に関するページが結構多くて、こういった生活に興味がなくても料理に興味のある方はおもしろいかもしれない。道具へのこだわりや素材への思いは真摯で好感が持てる。後者は野草を摘んで食べることもあるらしく、その解説が載っているので小学校の時の地域探索マップっぽくてたのしい。それとそこまで文章が編集されていない感じなので、ありのままっぽさは後者の方があるかも。あとなんでもないことから何かを連想する想像力というか、そういったものの素朴さに親近感を覚えた。

 こういったひとたちはマジョリティの渦から抜けだして距離を置いているおかげなのか「これがいいからこうしなさい」というような教訓じみた書き方をしないから読んでいて疲れない。どうしても生き方に関する本というと、ハウツー本になりがちな気がする(そんなにたくさん読んでいるわけではないけれど)。それだけ人間が生き方に関して思いを馳せ、頭を悩ませる時間が長いということなのだろう。まぁ生きてなければ死んでいるわけだし、順当な気はする。

 わたしはゲームしたいしきれいな絵もほしいしたまごのついた車海老もひんぱんに食べたい人だから、本のような生活をしたいわけではない。しかし両者のもつ、他の人やモノとのほどよい距離感というのがけっこうすきだ。『ニートの歩き方』以降これ系の本を数冊読んで「いいな~」と思えるのが距離感だとわかったので、今後はこの類の本をあまり読まなくなっていく気がする。だけど全く知らぬ人の、自分とは全く違う生き方をしているという本はパラレルワールドの物語、ちょっとフィクションのように見えるときもあっておもしろいから、どうだろう……見つけたらやっぱり読むのかもしれない。

 

 お次は久世光彦さんの『飲食男女』。じつに何年ぶりかにフィクションを読んだ…。以前食と性の話をしたときにコメントでおすすめして下さった方がいらして出会えた一冊。短編のかたちで女と、それにまつわる食べ物のことが書き留められている。

 記事はこっち。

cryin8c10wn.hatenablog.jp

本はこっち。

 久世光彦さんの本ははじめて読んだのだが、どの作品にもいろつやがあってみずみずしく、それでいて品のあることばに物語全体が包まれている。そのことばのあまりの美しさに、よどんだ心が浄化されたような気さえした。と同時に、自分のほんとうにすきな「ことば」というものがこういった、洗練された透明感のある(「透明」に違和はあるが、しっくりする語彙が見つからないのでひとまずこれで…)ものだということを思い出す。美しいことばを携えた物語は、垢まみれな日常言語の世界から一気にことばそのものの美しさの世界へ引き込んでくれる。物語を読むのは話の流れを楽しむこともあるが、美しいことばの世界に旅立つことでもあるという気持ちを呼び覚まされる。久しく物語を読んでおらず、その気持ちがすっかり眠ってしまったのであった。

 またことばに対する自分の態度を反省するよいきっかけにもなった。このブログはそもそも忘れないための記録と、「書く」すなわちことばの使い方の練習としてはじめたのだけど、最近は後者の目的がやや薄らいでいる予感がする。もちろん仕事でやっているわけではないからすきにしたらよいのだけれど、間違いなく「ことば」は大事にしたい事柄の一つで、ウェイトもそこそこ大きいのでブログに限らずもう少し気を遣っていければいいな。日常言語の垢っぽさを捨てるでもなく、美しいことばに対する憧憬、並走したい気持ちも忘れないバランスがほしい。純粋に楽しみたいこともあるし、自分の「いいな」という感じを実現させるためにも、美しいことばと物語が静かに抱き合っているような作品をたくさん読みたい。

 ここまで内容について全く言及していないのだが、もちろんそちらも素晴らしい。短編であるし、何よりことばそのものと向き合うことでしかわからない味というものがこの本にはたくさん詰まっているので、気になったものだけでもいいから読んでほしいなあ。気に入ったものを3つあげるなら「悦ちゃんのジャム」「桃狂い」「靴が鳴る」だろうか。

 さいごにおすすめして下さった方へ。こんなにも素敵なものがあることを教えてくださったことに、深く感謝を申し上げます。過去の読書経験においてこのようなことばの美しさに触れたことが、わたしがことばにこだわりはじめた端緒と言っても過言ではありません。しかしそのことを小説を読まなくなったことでとんと忘れておりまして、この本を読んで脳の底に凍った記憶が溶けたような心地でございました。ありがとうございました。